食彩品館.jp

全国の流通業の皆様にお願いしたいことがあります。高齢者配慮のこと。

 母は90歳を超えていますが、今だ元気に一人で暮らしています。
好奇心旺盛でニュース番組を見て、わからない言葉があるとノートにメモをして、時々訪れる子供(つまり、食彩品館.jp)に「これは一体どういうこと?」と聞いてきます。
毎日、日記をつけているのですが、簡単に1行程度、その日の体調や行動をメモ程度に附け加えています。
90歳を超えてもしっかりと自立して暮らしてくれていることに感謝と尊敬の念を抱くとともに、末長く健康で、自立した状態で暮らしてほしいと願っています。若い頃、親不孝ばかりをしていた愚息としては。

 母は何か重要な用事があると私か私の弟に連絡をしてくるのですが、それは例えば年金の複雑な手続きだったり、病院でのMRIの検査結果を医師から説明を受けたりする時だったり、自分の判断だけでは心もとないことのみを頼ってきます。
弟 と私は近い距離に住んでいますが、母との距離は300kmほどあります。交通網が発達したとはいえ、働き盛り(をかなり過ぎていますが)の男性がすぐに動 ける距離ではありません。ですが、大抵は弟がすぐに駆け付けてくれています。弟の都合がつかない時は私が馳せ参じています。
特に少し値の張る買物の時は必ず私を呼びます。直近では補聴器の購入時がそうでした。
そういった点では、いわゆる「オレオレ」や「振り込め」等のトラブルには巻き込まれる心配は少ないと思っています。

 そんな老齢の母のことで少し心配な出来事がありました。

  たまたま帰省の折り、あるショッピングセンターへ買物に出かけました。実家から少し遠方の大きなショッピングセンターで、私の家族4名と母で買物に出かけたのですが、こういった場合、それぞれが興味のある商品を購入し、買物が終われば待ち合わせ場所(大抵は精算レジ近くの椅子のある場所)で、他の同行者の 買物が終了するのを待つというのが私たちの決めごとになっています。
当日は買物に興味のない私の長男が最初に待合わせ場所に行き、その次は母が息子と 合流して待機していました。時々、様子を見に行くのですが、先ほどまで待ち合わせ場所で座っていた母が見当たりません。何処に行ったかと息子に尋ねると ショッピングセンター内の眼鏡店へ行ったというのです。
おかしいとすぐに思いました。
前述の通り、少し高額の買物には子供に相談しながら自分のお金で支払うのが母の慣例。
すぐに眼鏡店へ向かいました。
すでに検眼も済ませ、フレームもレンズも決めて、注文書に個人情報を記入しているところでした。
フレームの価格を見たところ、普段、母が購入しているメガネの価格よりも2倍ほどの価格帯の値段がついていました。
この店の店頭表示は「フレームにレンズ価格が含まれている」ということを知っていたのでフレーム価格のみと思っていたら、追加料金が結構な金額を請求されていることにも気付いたのです。
普通の標準レンズならば追加料金はかからないものの、遠近両用だったり、高品質レンズに変更したりすると追加料金がかかるのは当然、承知。それでも、昨今の 低価格ロードサイド眼鏡店と比較すると、結構な価格の追加料金でした。追加料金だけで私が今、使っている遠近両用眼鏡の購入金額以上です。
当然、合計金額は・・・・・・・。
その時、母が動揺したのです。小さい声で「そんなにすると思っていなかった」と言ったのです。
私は母に尋ねました。「合計金額を聞いた?」。母は首を振りました。
おそらく、店の方はフレーム価格のことも追加料金のことも説明されたと思います。もちろん合計金額も。
全国チェーンの有名店です。価格説明なしで商品を勧めるわけがありません。
母は耳が遠く、そしてその日の補聴器は電池が切れかかっていたらしいのです。もちろん、フレームに記されている価格表示はメガネをかけていても文字が小さ すぎて読めません。

私は迷いました。

「思っていたより高いんだったら止めにしたら」と母に忠告すべきかどうか。
検眼を済ませていて、注文表に個人情報を記入している段のキャンセル。
申し出れば、製作前なので当然、店側も受け付けてくれると思います。
でも母の心情を思うとどうなのでしょうか。
迷いましたが母に「この眼鏡が気に入ったのなら購入したら良いし、少し高すぎると思ったら(私が)断るから」と伝えました。
母は持っているバッグの中から銀行名の入った封筒を取り出し、中に入っているお札を数えながら店の方に支払いました。

  大事なことは子供に相談しながら事を決めることを慣例としていた母が、たまたま立ち寄った店で子供に相談することなく、少し高額の買物をしてしまった。なんでもないようなことですが、母にとっては何か、私たち子供に対して申し訳ないことをしてしまったような、そんな雰囲気を感じたのです。

 実は、以前、高齢者に配慮する店というテーマで記事を書いています。
2010/11/21お年寄りに優しい、安心できる店について

 今回は母にとっても私にとっても大変、勉強になった事例となりました。

 そこで、全国の流通業に従事する皆さまにお願いしたいことがあります。
「高齢者に優しい店って何?」を再度、考えていただきたい。
私は自分の母親が買物する時を想定して、高齢者が困らないような店作りをすることを心掛けてきました。建物や設備・備品のような物理的なことの配慮はしてきましたが、ソフト面での対応はできていませんでした。もう15年以上前のことですが。

 あなたの高齢の親が買物に来ても困らないような店づくりをしていますか?
今一度、考えていただきたい。

さらに、これはメーカーの方にもお願いしたいことですが、大事な情報はフォントを大きくして目立つように表記していただきたい。
スーパー側の役割である価格表示はもちろんですが、賞味期限や消費期限が特に重要です。老人には読めないようなサイズで表記したりわかりにくい表示をしているとは思いませんか?

 どうかよろしくお願いいたします。

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